クリエイティブディレクション講座 13回目 4月3日
「クリエイティブディレクションとは」
古川 裕也 氏
古川裕也事務所
代表取締役/クリエイティブ・ディレクター
国内外で400以上の広告賞を受賞。カンヌライオンズやD&AD、OneShow、ACC、ギャラクシー賞など多数のグランプリに輝き、2020年にはアジア人初のD&AD President’s Award受賞。審査員・講演歴も豊富で、D&ADアドバイザリーボード日本人初就任。代表作に九州新幹線「祝!九州」、ポカリ「ガチダンス」、GINZASIX、グリコ、森ビル、リクルート、KIRIN、宝島社、Asicsなど多数。著書に『すべての仕事はクリエイティブディレクションである』。
講義の内容
1. クリエイティブディレクションは「存在意義」から始まる
2. アイディアを生むための視点と思考法
3. 広告は“広場”になる:人と社会をつなぐ表現へ
4. これからの時代、クリエイティブに求められること
5. おわりに
今回の講師は数々の広告賞を受賞している元電通の古川 裕也 氏です。
先日古川氏の著書である『すべての仕事はクリエイティブディレクションである』を購入したのでとても楽しみでした。
▼ 1. クリエイティブディレクションは「存在意義」から始まる
クリエイティブディレクションにおいて、最も大切なのは「企業の存在意義を定義すること」です。これは単なるマーケティング的なポジショニングではなく、「私たちはなぜ存在しているのか?」という問いに答えること。その答えがすべてのディレクションの根拠になります。
たとえば「課題を解決する」という視点も大切ですが、それ以上に「ブランドのミッションは何か?」を発見することが、アイディアを生み出すためのステータスをつくります。視座を上げて、より広い次元で物事をとらえる。そんな態度が求められます。
銀座SIXの事例では、「銀座の再ブランディング」がミッションでした。単に商業施設を立ち上げるのではなく、「銀座」という街そのもののイメージを再定義する。それが「東京」「日本」にまで広がるビジョンにつながっていました。
▼ 2.アイディアを生むための視点と思考法
クリエイティブディレクターの役割は、「一言で何をするのか」というコアアイディアを定めることです。
たとえば、ポカリスエットの「ガチダンス」シリーズでは、TVCMだけでなく、オンラインムービーやリアルイベントなど、キャンペーン全体のプロセスが一つの物語になっていました。4348人が参加した巨大なダンスイベントは、単なる広告を超えた“共創”のプロジェクトになりました。
ギネス世界記録に認定!「ポカリガチダンスFES」の舞台裏に迫る
Neo合唱では「合唱せずに合唱する」という逆説的な発想を起点に、コロナ禍でも音楽の一体感を感じられる映像を制作。NIKEやバーバリーのコロナ期CMなどにも見られるように、「今の社会状況をどう乗り越えるか」がアイディアに直結します。
また、「強さ」や「応援」という言葉も再定義されています。ポカリが提示した「Find My Way」は、誰かに励まされるのではなく、自分自身の道を自分で探す困難さに寄り添うスタンスでした。
▼ 3. 広告は“広場”になる:人と社会をつなぐ表現へ
ブランディングとは「世界との約束」をすることです。Appleのように、その約束は未来形であり、企業の主体性(主語)が強くなければ成立しません。
ブランディングとプロモーションの違いもここにあります。プロモーションは「明日売る」ためのものですが、ブランディングは「長期的にわくわくさせる」ためのもの。名前を聞いただけで気持ちが動くようになるには、深い哲学や態度、文化的な差異=ディファレンスを作ることが必要です。
たとえばIKEAは「デザインの民主化」を掲げ、障がいのある人のために3Dプリンターで家具を改善。アウトドアメーカーのREIはブラックフライデーに休業し、社員を自然の中へ送り出しました。広告は単なる情報伝達ではなく、社会との接点をつくる“広場”になるべきなのです。
家具をもっとインクルーシブに。障がい者の日常を変えるイケアのプロジェクト「ThisAbles」 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
▼ 4. これからの時代、クリエイティブに求められること
これからのクリエイティブディレクションには、2つの大きな変化があります。ひとつはメディアの多様化、そしてもうひとつはパーパスの社会化・高度化です。社会課題や人類の未来に貢献する姿勢が、ブランドにも求められています。
AIが人間より優秀になる分野が増える中で、クリエイティブディレクターに求められるのは「身体性」や「フェロモン」、つまり人間特有の感覚や直感を生かす力です。市場価値と社会価値の両立が、企業の存在意義を一層深くしていきます。
クリエイティブディレクターが体現すべき価値は「特別を作ること」「効率より声を届けること」。正解を探すのではなく、自分だけの問いを持ち、答えを越える“チャーミングな思考”を提示することが求められます。
たとえば、コカ・コーラが世界中の非公式ロゴを公式キャンペーンに取り入れた事例のように、「正しさ」よりも「多様性」や「参加」を大事にする表現へ。広告の技術は、社会そのものを動かす大きな力を秘めています。
ブランドロゴについて考えましょう。コカ・コーラ社のグローバルキャンペーン”Every Coca-Cola is welcome./どんなコカ・コーラも大歓迎さ”から学ぶブランド価値の所在地とは?|森 浩昭 / Hiroaki MORI
▼ 5. おわりに
クリエイティブディレクション講座も終盤になってきて、改めてクリエイティブディレクターとは?の概念に振り返るいい機会でした。
クリエイティブディレクションとは、単なる表現づくりではなく、企業やブランドの「なぜ存在するのか」を問い続ける仕事です。
社会や人にどう向き合うか。その姿勢を強く持って日々取り組んでいきたいと思いました。
