受講日:12月10日
講師:八木 秀人氏
Hand株式会社 代表取締役社長
Art Director Creative Director Artist
過去実績
2009.2012年:東京ADC賞
2011年:アドフェスト デザイン部門 グランプリ
2011.2013年:カンヌライオンズ デザイン部門 シルバー・ゴールド
2016.2018年:ONE SHOW ゴールド
など数々の賞を受賞
講義の内容
1.デザインワークとアートワークの関係性とは?
2.競合・コンペ形式のリアル
3.アートとは何か?
4.クリエイターの仕事環境作り
今回の講師は八木秀人氏です。2001年に多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後にマッキャンエリクソンに入社し、広告代理店でのキャリアをスタートしました。2006年電通入社後にはアートディレクター、グラフィックデザイナーとして仕事の領域を広げ、ユニクロやHonda、キリン等のクライアントを担当。2018年にはHand株式会社を立ち上げ独立、現在では企業ブランディングからロゴマークの制作、TVcmの企画まで仕事の領域を拡大し、また個人のアーティスト活動としても一面もある第一線で活躍しているアートディレクターです。
講義の題材は「デザインワークとアートワークの関係性」でした。八木氏は広告制作や企業ブランディング、TV CM企画といったクライアントワークを手がける一方で、アートワークにも注力しており、デザインとアートの違いを明確に理解し、言葉で表現していました。八木氏は、広告やクリエイティブを通じて収益を上げ社会に貢献する一方で、自己表現としてのアート制作に没頭する時間を大切にしており、この二軸のバランスが心地よいと語っていました。また、「クライアントワークは個人のアートワークを支えるためのもの」と捉え、企業コンペにも真剣に取り組む姿勢が印象的でした。
特に「コンペを取らないと会社が危ない。負けられないコンペ」という強い意志のもと、八木氏は膨大な量のロゴを制作し提案し続けるその姿勢には、力強さを感じました。さらに、学生時代に培った絵の技術を活かし、ステッドラーのPR動画で鉛筆一本からデッサンが完成する様子を描くなど、手を動かし試行錯誤を重ねる姿が印象的でした。これらの姿勢は、まさに八木氏の社名「Hand」を体現していると感じました。また、数々のクリエイティブ賞を受賞し、世間的にもその実力が認められている八木氏ですが、独立後の事務所では企業からの依頼を待つのではなく、自らコンペに応募し、勝ち取る姿勢を続けているという話が非常にリアルで驚きでした。その積極的で挑戦的なマインドには深い感銘を受けました。
個人のアート活動の事例紹介では、八木氏がアートとデザインの違いについて次のように説明しました。アートは「文化創造」「ブランド価値が高い」「残るもの」である一方、「貧乏になりやすい」側面もあると指摘。一方でデザインは「商業ベース」「一過性のものが多い」「お金に直結」といった特性を持つと述べました。アートは自己表現の場として自由に自分のイメージを形にできる喜びがある反面、制作費用や作品の価値を世の中に認めてもらい、それを収益化することには大きな困難が伴います。この葛藤の中で、自己表現と周囲の求めるものの間に悩み、精神的に追い詰められるアーティストも少なくないと語られ、その怖さについても触れられました。また、デザインとアートの違いについての解説や、自身の活動、さらに世界で活躍するアーティストの事例を通じて、「アート」と「デザイン」への理解が深まりました。これをきっかけに、世の中のアーティストへの見方が新たな視点で広がったように感じました。
最後に、八木氏は自身が経営する「Hand」という会社でのクリエイターの働く環境づくりについて語りました。八木氏のアート活動の考え方を反映し、チームのメンバーは仕事以外の時間に「各々の好きな創作活動」に取り組むことが許されているそうです。最近では、CGツールや動画ツールなど、メンバーそれぞれが学びたいことを共有し、互いに学ぶ時間を作る風土が生まれているとのこと。八木氏は、抑制せず個性を尊重し合う職場環境を提供することを意識していると語りました。
この講義を通じて、仕事としてのクリエイティブワークだけでなく、自己表現としてのクリエイティブワークにも時間を割くことの重要性を改めて感じました。また、目的を持たずに純粋な気持ちで自己表現を楽しむ「わくわくする感情」を大切にすることが、クリエイティブにおいて忘れてはいけない感情であることを強く実感しました。
