IPKの、アートディレクター養成講座レポート - 第二十回目
企業のアートディレクション 〜萩原幸也氏が語る、VISIONからVIへの展開と自己開示の重要性〜
※本記事のタイトルはブログの内容からSTORYAIの機能でタイトルをつけました。
受講日:12月24日
講師:萩原 幸也氏
株式会社リクルート
マーケティング室 クリエイティブディレクター
株式会社リクルート
過去実績・経歴
カンヌライオンズ モバイル部門 グランプリ
TDC賞 受賞
武蔵野美術大学大学校友会 会長
JAA 公益社団法人
講義の内容
1.企業のアートディレクション
2.講師の経歴・これまでの自分
3.VISIONからVIへの落とし込み
4.様々な専門領域に飛び込んでみる
5.自己開示が苦手なデザイナー達
今回の講師は萩原幸也氏です。2006年に武蔵野美術大学を卒業後、リクルートに入社しコーポレートおよびサービスのブランディングやマーケティングを担当。カンヌライオンズ グランプリなど国内外のアワードを受賞し、SNSの総フォロワーは10万人を超えます。母校・武蔵野美術大学では、社会人向けの創造的思考育成プログラムの立案・講師を務めるなど幅広く活躍。現在は株式会社リクルートのマーケティング室でクリエイティブディレクターを務めています。
講義の題材は「企業とアートディレクション」。萩原氏は講義の冒頭、具体的な内容に入る前に自己紹介を交えた雑談からスタートしました。実は15年前のAD養成講座の受講生だった経歴があり、そこから自身の経験談を語りました。もともと趣味がなかった萩原氏は、「気になること」から始めて趣味を100個作ることを実践。その中でも、電車構内の液漏れを撮影する「漏れ鉄」に夢中になり各駅の特色ある対策を記録し続けた結果、30歳の時に「タモリ倶楽部」で超ニッチなマニアとして紹介されました。この経験から「共感されないニッチな趣味でも継続すれば新たなつながりが生まれ、面白さが広がる」ことを実感したと語りました。また、美大生時代には自らサークルを立ち上げ、組織図を考えたり作ったりすることを楽しんでいたことを回想。過去に夢中になった遊びや経験が今の仕事に繋がっていると話し、「自分が好きだったことを改めて分解すれば本当にやりたかった仕事や熱中できる趣味が見つかるかもしれない」と序盤で伝えていました。
次に萩原氏は、「VISION・MISSION・VALUE」からパーパスについて、株式会社リクルートを例に挙げて説明しました。コーポレートアイデンティティをヴィジュアルアイデンティティに落とし込むプロセスについて、他社の事例も交えながら解説していただきました。講義の中で特に印象的だったのは「ブランディングとマーケティング、どちらが大切か?」という問いです。これまでのデザイン業務の中で直面してきたこの問いに対し、どちらか一方を重視するのではなく、考え方を再整理する必要があると感じました。リクルートの基本理念からMISSION・VISION、そしてロゴデザインが決まる過程を聞く中で、ブランディングは単なるマーケティングの手段ではなく、事業戦略全体に関わる考え方であると再認識しました。ブランディングは、社会(アウター)や企業内の社員(インナー)に対して事業戦略をどうアプローチするかを示し、ブランドを変えることは企業のVISION・MISSIONを変えることと同義だと感じました。また、ブランドの変化は、商品開発や新規事業、人事採用、育成方針、PR・マーケティング手法にまで影響を与え、企業の在り方そのものを変えることにつながります。これまでの講義で学んだ「VIの作り方」や木住野氏が語った「企業の“らしさ”の表現」を振り返りながら、ブランディングの本質について改めて考えさせられました。
また萩原氏は、自分の仕事への向き合い方について、「自分は飽き性である」と赤裸々に語りました。ひとつの業界や専門分野にこだわらず、さまざまな分野に飛び込み、デザインやマーケティングなどの知見を広げてきた萩原氏。その結果、多くの経験を積み、独自性を育んできたと話しました。「石の上にも三年」という言葉がある一方で、萩原氏は専門領域を少しずつずらして新しい分野に飛び込むことの大切さを強調しました。また、デザイナーは自己開示が苦手な人が多いと指摘し、もっと自分の好きなことや趣味を世の中に発信することで、共感する人々との輪が広がり、仕事の機会やコミュニティも広がると話しました。萩原氏自身が「縁」を大切にしているように、新しいコミュニティに積極的に飛び込むためには、自己発信をする機会が重要だと感じました。
