クリエイティブディレクション講座 11回目 3月6日
「クリエイティブディレクションのマインドセット」
小助川 雅人氏
資生堂クリエイティブ SHISEIDO CREATIVE
クリエイティブ本部 チーフクリエイティブディレクター
営業⇒CMプランナー⇒クリエイティブディレクター
営業を経て宣伝部(現クリエイティブ本部)へ転部。CMプランナーからクリエイティブディレクターとなり、ブランド広告やコーポレートコミュニケーションに従事。2016年カンヌライオンズWゴールド受賞、2018年フィルムクラフト審査員。代表作に『high school girl?』『The Party Bus』『My Crayon Project』など。
講義の内容
- 1. クリエイティブディレクターとしてのマインドセットのきっかけ
2. みんなや自分の個性を学ぶ「マイ・クレヨン・プロジェクト」
3. CDに求められるスキル
4. クリエイティブディレクションの4ステップ
5.最後に
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▼ 1. クリエイティブディレクターとしてのマインドセットのきっかけ
小助川氏は冒頭に、資生堂の日焼け止めのアネッサのCMが自身の大きなマインドセットのタイミングになったと言います。
「クリエイティブディレクター(以下CD)はチームをリードするのではなく、チームに助けられる人である」
CDは使う脳みそが全く違うのでプレイヤーからディレクターへのマインドセットが必要とのことでした。
▼ 2. みんなや自分の個性を学ぶ「マイ・クレヨン・プロジェクト」
冒頭のメッセージの深堀も気になるところですが、まずは、小助川氏の資生堂クリエイティブでの業務紹介を頂きました。
小助川氏の業務は資生堂のブランド、コーポレート、インターナル、など多岐にわたりますが、小助川氏自身が「隙間仕事」と呼ぶ、これからは資生堂がまだやっていないけどやった方がいいこと、小さくても意味があることを推進しているとのことでした。
その中の事例として、小学校に出向いて、子供たちのそれぞれの肌の色を抽出し、自分だけの色のクレヨンを作る「マイ・クレヨン・プロジェクト」。昔は「肌色」がクレヨンにありましたが、いまは「薄だいだい」と名前が変わっています。子供たちは絵を描くとき、肌をこの薄だいだいで色を塗りますが、人の個性は唯一無二で同じ人間はいないように肌の色も同様に人と全く同じ色ではありません。
それぞれの個性を認識する、多様性を自然に身に着けることをクレヨンという子供にとって身近な道具で表現しているのが素晴らしいと思いました。
以下の動画もありますので、ぜひご覧ください。
▼ 3. CDに求められるスキル
昔と違い、CDとしての仕事は多岐にわたり、求められるスキルも幅広いものになっています。
チームビルディング、ファシリテーション、ヒアリング力、情報収集、仮説思考、モチベーション管理、交渉力、ディベート力、プレゼンテーション……。
少し列挙しただけでも、かなり多岐に渡りますね。これだけのスキルをすべて完璧に身につけるのは不可能に近いので、自分なりのCD像を模索することが大切です。
そのために、「自分はどういう人間か」を考え自分の強みを知ることが大切です。小助川氏は営業からキャリアをスタートしため、他職種への理解、また自身の育った兄弟構成から「バランスを取る」「空気を読む」といったスキルが役立ったとのことでした。他人になろうとするのではなく、自分の強みを活かしたCDのあり方を考えることが重要です。
ワークショップでよく行うのが「あなたはどういう人間ですか?」という問いかけ。まずは自己理解を深め、自分のスタイルを確立していくことが、CDとしての成功の鍵になります。
▼ 4. クリエイティブディレクションの4ステップ
CDの仕事は、大きく4つのステップに分けることができます。
(1)情報整理:目的を明確にし、優先順位を整理する
(2)アイデア開発:パーパスを意識
(3)提案:プレゼンテーションの工夫で相手を納得させる
(4)実制作:制作スタッフと目的を共有し、スムーズに進行させる
(1)情報整理:目的を明確にし、優先順位を整理する
プロジェクトが成功するかどうかは、最初の「目的設定」にかかっています。クライアントの要望は漠然としていることが多いため、適切な質問を投げかけながら本質的な目的を引き出すことが求められます。
ここで役立つのが「ソクラテス式問答法」や「イエス・ノーではない開かれた質問」。適切な質問をすることで、相手の考えを言語化し、共通認識を持つことができます。人間はブレてしまうので目的をしつこく共有することが大切です。ブレた時の議論として「主語をお客様(ターゲット)にする」のは有効とのこと。確かに議論が進むと、お客様目線が抜けてしまって主観になってしまうことありますよね。
情報整理、目的の明確化をするにあたって、社内外のネットワークの重要性・チームの重要性も必要とのことでした。
元々社交的でなくても、クリエイティブの為にはネットワークを活用し、更には冒頭にもあった「CD=助けられる人」なので、どうしょうもないピンチに助け合えるチーム作りが大切です。小助川氏は普段から、「一人一人に向き合う、適切な褒めスキル、人のいいところを見つける」を心がけているとのことでした。
また、以下のお話は印象的でした。
仕事には「やらされる仕事」と「主体的に動く仕事」があります。前者は疲れやすく、モチベーションを維持するのが難しいものです。一方で、主体的に動く仕事は充実感があり、エネルギーを生み出します。特にCDの仕事は、自分なりの意味を見出し、チームを動かすことが求められます。
CDという肩書があるからといって、偉いわけではありません。適切な人材の配分や評価を行い、チーム全員が働きやすい環境を整えることが重要です。また、誰かの発言(否定的であっても)には必ず意味があり、それを尊重する姿勢が求められます。
また、CDはチームの心理的安全性を確保する役割も担っています。怒らない、悪口を言わないという基本的な態度が、安心して意見を出せる環境を作ります。アンガーマネジメントを意識し、ポジティブな姿勢を持つことが大切です。
CDがしょんぼりしていると、その空気はチームにも伝わります。逆に、前向きな姿勢で取り組めば、周囲も自然とチームもポジティブになります。だからこそ、CDは意識的にポジティブでいることが求められます。
とはいえ、完璧である必要はありません。時には弱みを見せることも大切です。微妙な匙加減ではありますが、人間らしさを持つことで、より良いチームの関係性が生まれます。
多くの領域、人と関わるCDだからこそもありますが、小規模なチームだとしても当てはまるとても重要な考え方・姿勢だと思いました。
(2)アイディア開発:パーパスを意識
近年、ブランドには「パーパス(存在意義)」が求められています。例えば、アネッサのパーパスは「Let people shine infinity under the sun」。単なる日焼け止めではなく、「人々が太陽の下で自由に輝くためのサポートをする」という視点で考えられています。パーパスを機能させるには覚悟が必要ですが、自身が担当しているサービス・ブランドのパーパスについいて自分なりの理解を持っておくことが大切です。
また、CDとして、他部署から「困ったときは○○さんに相談しよう」と思われる存在になることが大切です。そのためには、積極的に知識を共有し、周囲と良い関係を築くことが求められます。
- 自分の専門性を発信する
- 他部門への事例共有を行う
- 社内での自主研究を進める
良い仕事は、良いパートナーシップから生まれるのです。
(3)提案:プレゼンテーションの工夫で相手を納得させる
アイデアを伝えるうえで、プレゼンテーションボードは非常に重要です。課題・アイデア・結果を端的にまとめ、シンプルな説明で「なるほど!」と思わせることがポイントです。
例えば、ドイツではぜいたく品としてみなされるタンポンに高い税率(付加価値税17%)がかかる一方で、本の付録には低い税率(軽減税率7%)が適用されます。この仕組みを利用し、タンポンを本の付録として販売するアイデアが生まれました。なぜ女性の生理用品であるタンポンが高い税率なのか?シンプルでありながら社会課題を解決するユニークなアイデアです。
15個のタンポンを本の付録に。あるドイツ企業の訴え | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
また、プロジェクト名も大事です。「マイ・クレヨン・プロジェクト」のように、シンプルで印象に残るネーミングがアイデアの浸透を助けます。
(4)実制作:制作スタッフと目的を共有し、スムーズに進行させる
制作フェーズでは、チームとの密なコミュニケーションが不可欠です。
- 目的を何度も共有する
- 制作スタッフをリスペクトし、意見を引き出す
- 懸念事項を事前にクリアにする
また、現場の雰囲気を「明るく・楽しく・真剣に」保つことも大切。良い環境が、良いアウトプットにつながります。スタッフとのミスコミュニケーションが起きたとしても、立ち返るのは目的の共有・密なコミュニケーションが大切とのことでした。
▼ 5. 最後に
小助川氏は「世界は人の「心」で動いています。人の心の動きを想像することからコミュニケーションは生まれる。なるべく誠実に向き合いましょう」とのことでした。
人間として、社会人として基盤となる大事なスタンスですね。基本的なことが抜け落ちないようにしていきたいと思います。
また、小助川氏は講義の最後に「皆様(受講生)の活躍を期待します。」とメッセージを発信したり、講義の内容からも社内外やチーム内など他者に対する視点がとてもある方だと思いました。
