12月3日
講師:浅井 雅也氏
所属
Droga5 Tokyo
CHIEF CREATIVE OFFICER
EXECUTIVE CREATIVE DIRECTOR
過去実績
- 2017年:博報堂最年少グローバルクリエイティブディレクター就任
- 2018年:Forbes Japan誌「世界を変える39人のデザイナー」に選出
- 2021年:Droga5 Tokyo 設立メンバーとして参画
- 代表作:Apple 「shot on iPhone」の広告でCannes Lionsグランプリ
過去受賞実績
- 国内外:計100以上
講義の内容
- グローバル視点でのアートディレクションの考え方
- ミッションとパーパスの混在
- 「人視点」に立ち返った広告クリエイティブ
- 人視点の体験が「共感し共鳴に繋がる」
今回の講師は浅井雅也氏です。高校時代に留学のため渡米し、サンフランシスコの学校で広告学部アートディレクションを専攻しました。日本とアメリカで培った視点を活かし、クリエイティビティとイノベーションを軸とした課題解決のアプローチが世界的に評価されています。2021年にはDroga5 Tokyoの設立メンバーとして参画し、Chief Creative Officerとして企業のブランディング戦略や部門のマネジメントを担当しています。代表作のApple「Shot on iPhone」ではCannes LionsグランプリやGrand Clioをはじめ多数の賞を受賞。これまで100を超える受賞歴を持つ、第一線で活躍するクリエイティブディレクターです。
講義の題材は「グローバル視点でのアートディレクションの考え方」でした。序盤で浅野氏は、Apple本社勤務時代に携わった広告「Shot on iPhone」を例に挙げ、携帯カメラの価値を訴求し世界的に評価された事例を紹介しました。この事例を通じて、アートディレクターがアイデアによって人々の行動、思想、視点、さらにはシステムに「世界規模」で影響を与える力を持つことを伝えました。また、広告が持つノンバーバルな国境を超えたコミュニケーションツールとしての役割や、情報を極限まで削ぎ落としたワンメッセージが国を越えて世の中にインパクトを与える方法についても触れました。これこそが「グローバル視点で活躍するアートディレクション」の考え方の核であると思いました。
また、ドッグフード会社を例に挙げ、ブランドパーパスとミッションの混在についても触れていました。一部の企業や社員の間では、「ドッグフードを作る会社は、ドッグフードを作るために存在する」と誤認されることが多いと指摘。本来、その会社の存在意義(パーパス)は「犬の健康を守ること」であり、ドッグフードはその目的を達成するための一つの手段に過ぎません。このように、目的(幹)と手段(枝葉)が混同されるケースが多いと述べました。さらに、企業が明確なパーパスを設定すれば、それに基づいて新たな事業展開が可能になると説明。例えば、「犬の健康を守る」というパーパスに基づけば、ドッグフード以外にも補助器具の開発や運動用プロダクトへの進出といった可能性が広がります。こうしたパーパスの確立は、表面的な流行に終わらず、根付くプロダクトを生み出すために重要であると語りました。
講義の中で紹介された「Be Human(人間らしく)」という言葉も印象的でした。これは、Apple勤務時代から刷り込まれた考えで、「商品視点」ではなく「人目線」に立ったメッセージ広告を作る重要性を示しています。単に商品の機能を伝えるのではなく、人が何を価値と感じるかを追求し、それをエンドベネフィットとして届けることで、人の心に響く広告が生まれるという考えです。さらに、シンプルでそぎ落としたワンメッセージの重要性に加え、映像に適したBGMや効果音が広告の世界観を高める役割を持つと強調されていました。こうしたビジュアルや伝え方のアイデアを洗練させることが、クリエイターが果たすべき独自の役割であり、貴重なポジションであると語られました。
今回の講義では、組織全体の舵取りから、そこから派生する事業やアウトプットの具体的なポイントまで、全体を俯瞰した内容を学ぶことができました。浅野氏のApple時代の広告制作のエピソードや、スティーブ・ジョブズとの人間味あふれるやり取りを交えた実例が、講義内容をより深く理解する助けとなりました。プロジェクト全体のディレクションや細部のクリエイティブへの目配りを実現するためには、このような俯瞰した視点が重要であると改めて強く実感しました。
